品川監督に聞く所作の裏側（中篇）
所作の裏側
Vol. 8
Special
品川監督に聞く所作の裏側（中篇）
更新日: 2020.05.20
なぜ恋愛をテーマに撮らないのか。
と聞かれることがあるけど、描かないことは、
自分の中にないモノなんだろうと思う。
品川ヒロシ監督の映画を観ていると、登場人物に大きな特徴があることに気づく。不良、友情、ケンカ、それを取り巻く環境といった「男の世界」がほとんどを占めているのだ。映画監督とは自分が撮りたい題材を撮るものなのだと仮定するなら、たとえば恋愛にはまったく興味がないのだろうか。何かを作る人は、作りたいものに対しては饒舌だが、「なぜこれはやらないのか」と聞かれた途端に口を閉ざしてしまうことがある。自分が興味を持っていないことや、やりたくないことをわざわざ人に話す必要はないからだ。聞きにくいことだと理解はしたうえで、僕はおそるおそる質問してみた。
「なぜ恋愛を扱わないか。確かに、僕の映画の登場人物は圧倒的に男だらけなんですけど、『モテキ』や『ノッティングヒルの恋人』のような恋愛映画だって、観るのは好きなんですよ。面白いから。映画独特の、綺麗な女優がたくさんいる華やかな撮影現場などにも憧れますけど、脚本を書いているとどうしても出てくるのが男性ばかりになっちゃう。これはもう自然なことなので仕方ないですね。『仁義なき戦い』や『ゴッドファーザー』が好きだったんです。自分で書いた小説を映画化した『ドロップ』は不良の話、『漫才ギャング』もわかりやすいですが、男ばかりです。『サンブンノイチ』『Zアイランド』もそうで、女性がメインになっている映画は最新作の『リスタート』だけです。それも主人公がEMILYという女性であるというだけで、恋愛がテーマではなく、夢を追いかける人の青春の物語です」