どれだけ知ってる? 「たばこ」にまつわることわざたち《後篇》
日々の会話にちょっとした奥行きをもたせてくれることわざたちのなかには、たばこにちなんだものもあることをご存知ですか? 前編にひき続き、ことわざが生まれた江戸時代当時の文化や慣習とともに、たばこにちなんだことわざをご紹介します。
じつはまだある!? 「たばこ」にちなんだことわざたち
日々の会話にちょっとした奥行きやユーモアをもたせてくれることわざ。そんなことわざの中には、「たばこ」にちなんだものがあることをご存知ですか?
そこで今回は、たばこにちなんだことわざを6つご紹介します。前編にひき続き、ことわざが生まれた江戸時代当時の文化や慣習も交えながら、たばこにちなんだことわざをご紹介します。
①煙草を輪に吹く
意味:喫煙者が退屈しのぎにおこなう仕草のこと。
江戸時代には、たばこの煙でお座敷芸をする者がいたそう。ただ煙の輪っかをつくって吐き出すだけではなく、さまざまな形や芸を見せていたといいます。
手のこんだ芸は別格ですが、たばこの煙を輪形に吹く仕草は、退屈をしのぐ手段として現代でも行なっている人もいるかもしれません。
そんなことから「煙草を輪に吹く」ということわざが生まれ、退屈しているようすを形容する意味になっていったようです。
②煙草がしとしとすれば雨が降る
意味:刻みたばこが湿ってきたときは、雨が降りやすいという意味。
刻みたばこは吸湿性が少なく、長く貯蔵しても品質が悪変することが少ないことも特徴のひとつだったと言います。そんな吸湿性が少ないとされる刻みたばこも、梅雨の季節や雨模様のときのように、大気中の湿気が多いときには否応なく湿り気を帯びたのかもしれません。
③化かされそうなときは煙草をのむとよい
意味:キツネやタヌキに遭遇した際は、たばこを吸うと化けずに済むという言い伝え。
香川県の農山漁村で言い伝えられてきたところから派生したことわざ 。
この言い伝えの真偽はわかりませんが、たばこの煙を浴びせられて、尻尾を巻いて退散するキツネやタヌキの姿はすこしユーモラスかもしれません。
④屁は笑い草、煙草は忘れ草
意味:嫌なことがあったときに笑いを誘ったり、気持ちを切り替えさせたりしてくれるもののたとえ。
「笑い草」の草とは、「語り草」「質草」などの草と同じく、「〜の材料」「〜の種」の意味で用いられています。そして「煙草は忘れ草」という際の草は、この意味のうえにたばこが植物としての草であることを掛けた言葉となっています。
このことわざからわかるように、当時の人々が心配事や憂さを忘れさせてくれる手段としてたばこを使うことがあったことを感じさせます。
⑤人と煙草の良し悪しは煙になって後の世に知る
意味:たばこの良し悪しや人の真価というものは、後にならないとわからないということ。
たばこの良し悪しが、吸って煙にしたあとでなければ分からないように、死んで煙になった後でなければ人間の真価も分からない、という意味のことわざ 。
人の良し悪しはもちろんですが、たばこの良し悪しが見かけだけでは分からないことはたしか。手にとって火を点け、煙を出してにおいを嗅ぎ、吸ってみてその刺激を味わってみる。香りや刺激など、その人との相性が良いと感じたものが「良いたばこ」と言えるのかもしれません。
数ある「たばこ」にちなんだことわざ たち
いかがでしたか? 前回の記事につづき、いずれも江戸時代当時の人々の暮らしぶりや価値観がうかがえるものばかり。現代の日常会話では使える場面はやや少ないかもしれませんが、機会があったらぜひ、今回ご紹介したことわざを思い出してみてください。